トップページ > 府議会の報告 > 質問・答弁(平成23年) > 平成23年9月定例会 一般質問

府議会の報告

平成23年9月定例会 一般質問

平成23年9月30日
栗原 貴子 議員

1 新公会計制度について

(1)固定資産の評価方法を取得原価主義から時価主義に改めるべき
(質問)
地方公会計制度については、総務省でも専門家による研究会を立ち上げ、平成19年10月には「新地方公会計制度実務研究会報告書」としてまとめられました。
その特筆すべき特徴は、固定資産の評価が取得原価主義を柱とする企業会計とは異なり、公正価値評価、すなわち時価を採用しているという点であろうかと考えます。
さてところが、府の新公会計制度では、固定資産の評価方法として、取得原価によるとされています。私はこの点が、非常に問題だと思います。
そもそも財務諸表が果たすべき大きな役割のひとつは、他の類似団体との比較可能性を担保するという点。全国のほとんどすべての自治体が資産の時価評価を原則とする中で、 大阪府は他の自治体との比較ができないことになります。
そしてもうひとつ、固定資産の時価を開示することは、現在の大阪府のように、地価が下げ止まらないような状況では、 財政リスクを明確にするという意味でも、非常に重要なことだと考えます。しかしながら取得原価主義では財政リスクを明らかにできません。
このように、取得原価では問題が多いと思います。なぜ、固定資産の評価方法を取得原価主義とされたのか、 また、時価主義を取り入れる考えはないのか、お答えください。
【会計管理者答弁】
事業推進のためのマネジメントに活用することを主眼として、取得原価を基本とすることとした。必要な時価評価は行っていく。
府民への時価の情報公開はこれからの大きな課題。時価情報を基本としたバランスシート等も作成してお示しすることを検討していく。
(2)減損会計の適用について
(質問)
次に、減損会計についてお聞きします。
今回の公会計制度では、資産価値が著しく下落したなどの場合には評価損を計上し、帳簿価額を減額する減損会計を、全国でも初めて導入されると聞いています。
こうした先進的な取り組みを始めるならば、減損の適用や資産の評価にあたっては、客観的な基準に基づき、公正かつ厳密に適用されることが必要だと思います。
そこでお伺いしますが、例えば、咲洲庁舎ですが、入居している大阪市の部局が今月中に完全撤退し、ビル全体の45%が空室になる見込みだといいます。
このままの状態が続けば、他のテナントへの影響も大きく、年度末に入居率が、減損の要件として示されている50%を切る可能性も大いにあると考えられます。
咲洲庁舎は現在では、庁舎として全面移転しないという判断がなされています。
したがって、規定にあてはめると、咲洲庁舎については、23年度の決算において、 減損が認識されることになるのか、あるいは少なくとも減損の兆候があると注記されることになるのでしょうか。
【会計管理者答弁】
咲洲庁舎については、来年3月31日時点の業務実態を見て、減損の兆候があるかどうか適切に判断していくこととなる。

2 大阪府土地開発公社について

(1)土地開発公社の必要性について
(質問)
土地開発公社については近年、経済環境や自治体の財政状況、あるいは、「第三セクター等改革推進債」の整備などの要因に後押しされて、 解散の方向性を打ち出す自治体が相次いでいます。
大阪市でも、今年の3月に政令市では初めて解散したとのことです。
さてそこでお尋ねします。府では現在も平成20年に財政再建プログラム案の中で決定した方向性に変わりはなく、 土地開発公社は存続させる方向だと聞いています。近年のこのような状況変化を受けて、土地開発公社の必要性についてはどのような検討がなされ、 存続ということになったのか、お聞かせください。
【都市整備部長答弁】
大阪府土地開発公社は、平成20年に策定した財政再建プログラム(案)において、『公社が先行取得し長期保有している用地の計画的な縮減に努め、 その解消が見込まれる平成34年時点で、そのあり方を再検討する』こととして、方向性は、『存続』とした。
その理由としては、以下の通り。
・府公社の保有資産については、着実にその解消が図られていること ・府事業の用地買収だけでなく、現在公社で受託する新名神高速道路のような国土軸を整備する事業など、国等が府域で実施する道路整備等の事業についても、 公社のマンパワーを活用した柔軟な対応が可能であること
・事業規模に応じた一定の資金と、用地買収の時期を逸することなく対応するための年間を通じた買収資金の確保が必要であること
・公社が先行取得した用地については、府において国庫補助を効果的に活用し、計画的に買い戻すことにより、府の予算の平準化が図られること
(再質問)
つい先日も、大阪府の地価の動向について、3年連続で下落したとの報道もありました。
計画によると、公社は今後、毎年50億円程度の新規取得を予定しておられます。ということは、地価の下落傾向が続く限り、 公社が土地を取得してから府が再取得するまでに、億単位の、膨大な金額の土地の含み損が膨らみます。
結局府としてはずいぶん高い買い物をしなければならないと思います。これは税金の無駄遣いではないのでしょうか。
お答えいただいた公社存続の必要性は、そういうデメリットを補って余りあるほどの大きなものなのでしょうか。
【都市整備部長答弁】
金銭面でのメリットは少なくなってきているのも事実。
しかしながら、権利者との関係で、府が取得したいタイミングで取得できないといったケースも少なくなく、 府の予算や事業の都合だけで用地買収はそう簡単にいくものではない。
例えば、次年度以降に買収を予定していた権利者から、「今年度なら買収に応じる。」との申し出があれば、当初予定していなかった買収資金が必要になってくる。
したがって、公共事業における効果の早期発現や府民生活と経済活動を支える都市基盤整備の推進という観点から、公社による先行取得を継続することとしたもの。
(2)公社のあり方について
(質問)
知事は就任以来一貫して、民意というものを何より大切にしてこられたと、私は認識しております。
議会の承認を受けることなく、何十億という巨額の買い物ができてしまうということについてはどうお考えでしょうか。
【知事答弁】
先行取得の場合に、原則議決は必要だが、土地の価格と面積要件がある。
2万平米以上だと議決が必要だが、大阪の実情ではそんな土地はほとんどない。
したがって、予算上の債務負担行為で議決を得ているというしくみ。
高度経済成長時代はこういうしくみが機能していたかと思うが、今は違うとの思いもある。
議会の議決が個別に必要であれば、ルール化すべく条例化を検討していただきたい。
(3)土地開発公社が計上している府に対する長期事業未収金の扱いについて
(質問)
平成22年度の土地開発公社の決算書には、大阪府に対する約17億円の長期事業未収金が計上されています。
この未収金については、府のホームページ上の説明によると、「公社が保有する代替地を処分した際に発生した差損については、 別途、本府が補助金等を交付することとしている。
またこれについて、予算上、当該年度で補てんしきれない場合、公社は決算上未収金計上を行うため、この資金不足分に対しても借入が必要である。」とのことです。
さてそこでお尋ねします。土地開発公社が計上している府にたいする未収金の具体的な内容と回収予定、 そして、府の側ではこの補助金、未収金をどのように会計上処理しておられるのか、教えてください。
【都市整備部長答弁】
総務省が示す土地開発公社経理基準要綱に基づいて、売却代金などを複数年にまたがって回収するものを、長期事業未収金として処理している。
1件目は、大阪府が岬町多奈川の関空二期事業土砂採取地において、多目的公園を整備するために、公社へ先行取得を依頼したもので、 平成18年度に公社より府へ引渡しが完了。
府が24年度までの各年度において、必要に応じて買戻すこととしたことから、公社は将来受け取る予定の売却代金を事業未収金として計上。
この事業に係る未収金は、約4億1千万円で、このうち約2億5千万円については、本年4月に公社は回収済みであり、残額約1億6千万円についても、平成24年度中に回収予定。
2件目は、国と旧日本道路公団及び大阪府の3事業主体が、第二京阪道路と関連する府道整備に伴う代替地事業を公社へ依頼したもの。
第二京阪道路等の用地買収が平成20年度に完了したが、代替用地の未処分地が発生したことから一般競争入札で売却処分を行い、 当初の大阪府負担金から売却収入を差し引いた差額(売却損)を公社に支払うこととしたもの。
府は、この事業に要する負担金について、予算の平準化を図るため、複数年にまたがって支払うこととしたことから、公社は事業未収金として計上。
この事業に係る未収金は、約13億円で、本年4月に全額を回収済み。 これらの事案のように、予算執行が複数年度にわたる場合は、府が将来負担する債務の限度額や期間を予算の一部である「債務負担行為」として定め、 その範囲内において毎年度、必要額を歳出予算に計上して執行している。
ただ、実際に執られた手続きや差損の補てんという経費の性格からすると、それぞれ一括して執行すべきであったと考える。
また、債務負担行為による事業は、毎年度の予算書に添付する明細書において、執行見込み額等を記載しておりますが、 本件代替地の事案に関する部分につきまして、誤りがあることが判明しました。訂正させていただくとともに、お詫び申し上げます。
<再質問>
土地の購入代金や、売却差損を補てんする補助金の支払いといった、本来であれば当然、単年度で支払をすべき支出を、複数年にわたる延払いとしたのは何故なんでしょうか。
ご答弁にあった予算の平準化というのは、要は、単年度で支払うとすれば、収入の範囲内で予算が組めなかったからということなのでしょうか。
【都市整備部長答弁】
予算の平準化を図るため、複数年にまたがって処理したもの。議員ご指摘のとおり、単年度で一括して執行すべきであった。
今後は適正な会計処理に努めていく。
(4)公社に借金を肩代わりさせることは、府の赤字隠しではないか
(質問)
売却損の補てんのための補助金であれば、将来の大阪府民に何ら受益をもたらすものでないことは明らかです。
知事が常々おっしゃっておられる「受益と負担のバランス」をとるということでは当然、現年度の歳出予算で計上したうえで、財源を手当てしなければならないはず。
それを後年度への延べ払いにするのは、将来世代への負担の先送り。
財政運営基本条例での基本理念である「財政規律の確保」に反するもの。
しかも、すでに負担が確定している債務を、財源確保の必要のない債務負担行為だとして、出資法人に借金の肩代わりをさせることによって、 府の借金が実際よりも少なく開示されることは、粉飾決算、赤字隠しに他ならないと思います。見解をお聞かせください。
【総務部長答弁】
財政規律の問題は、議員からのご指摘の通り。出資法人への単なる借金の付け替えは行うべきではない。
ご指摘の事案において、「赤字隠し」の意図はなかったが、結果として出資法人に負担させる形で単年度の歳出を抑える、後年度に負担を先送りすることとなったは事実。

3 財政運営について

(質問)
長く企業会計に携わってきた立場からみても、今回明らかになった土地開発公社をめぐる会計処理は、財政運営基本条例での、規律の確保、 透明性の確保という基本理念とはかけはなれた、不自然で、不透明で、不健全極まりない処理だと感じます。
こんな処理が許される、そして実際に行われていたという時点で、この条例案の趣旨、理念はもうすでに破たんしているといえるのではないのでしょうか。
この条例案が可決、制定されれば、条例で禁止されている以外の方法で、将来世代への負担の先送り、赤字隠しが横行するのではないかと懸念されます。
しかもそれに対して、条例で禁止されているわけではない、などといったお墨付きが与えられてしまうとすれば、この条例は財政再建に資するどころか、弊害にもなるのではないでしょうか。 見解をお聞かせください。
【総務部長答弁】
ご指摘のとおり、財政運営基本条例(案)においては、今回のような措置を直接規制する条項はない。
なお本条例案第11条では、府の事務及び事業は、他の当事者と適切な役割分担のもとで必要な費用が適切に負担される必要があるとの規定がある。
また、地方自治法施行令によれば、当該行為のあった日の属する年度に歳出を行うべきとあるので、条例を待つまでもなく、当然一括処理すべきであった。
議員のご指導もいただき、条例(案)をさらに充実していきたい。
<再質問>
例えば、今回問題にした土地開発公社との財政運営に関しては、昭和61年の旧自治省からの通知で、「地方公社等に対して安易な債務負担行為を設定することは、 後年度における財政の硬直化をもたらす」とあります。
さらに、平成17年の総務省の通知でも、「再取得に要した費用を長期にわたり繰り延べることは不適切な財政運営である」として、厳しく制限されているはずです。
公の見解として、「財政の硬直化をもたらす、不適切な財政運営である」と明確に示されているにもかかわらず、府では私が今回指摘するまで、 不適切であるという認識すらなく、使っておられたわけです。当然、この条例案での禁止事項にもなっていません。
あまりにずさんな条例案ではなかったでしょうか。
ご答弁にあったように、今回問題にした財政運営が、条例案第11条の趣旨に反することは、その通りだと思います。
しかしながら、この条例案の内容を熟知しておられるはずの理事者の皆さんが、この財政運営を不適切であると、認識しておられなかった、 この条文を読んだだけでは不適切だと認識できなかったということが問題なのではないでしょうか。
例えば、条例案の第5条では、退職手当債などの赤字債の発行が原則禁止されています。
しかしながら地方財政法第33条の8では、退職手当債の発行も一定の条件のもとで、認められています。
一方、先ほどお示ししたように、今回のような財政運営は、総務省や旧自治省からの通知でも、公の見解として、不適切であると明言されています。
にもかかわらず、実に不思議なことに、この条例案の中には明確な禁止条項がありません。
なぜ、法律で認められている退職手当債はダメなのに、総務省から禁止されている出資法人への借金のつけ回しについては、禁止条項がないのでしょうか?

関連サイト

page top