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府議会の報告

平成24年2月定例会 一般質問

平成24年3月6日
朝倉 秀実 議員

1 産業政策

企業の海外進出等にかかる大阪府の主導的支援について
(質問)
大阪が何でメシを食っていくのか、府議会に来て以来、この問いかけを続けてきているが、大震災、大洪水、ヨーロッパやタイまで加わって、 さらに厳しい状況が続く。とりわけ、この円高にどう対応すべきか。 企業による海外進出、生産拠点の海外移転、国内の空洞化、雇用の流出、喪失をどう捉えるべきか、日本人の雇用はこれからどうあるべきか、 ただ悲観論、否定論だけに終始することなく、大きな視点から考えなければならない。
今や企業の海外進出の足を引っ張ってはならない、空洞化を案じて縮こまることがあってはならない、 この国の経済が世界の中で生き残っていけるように、日本人の働く場も世界と日本の中でうまく分散され確保されるべきと考える。
円高は輸出、販売にはマイナスだが、輸入、購入には大きなチャンスである。
文具のコクヨはインドの大きな文具会社を以前の半値ほどで買い取った。
12億人とも言われるインドの中にこれからコクヨの新しい文具が入っていく。
貨幣機械のグローリーは英国大手をM&A、800億円で手に入れ、世界のトップブランドにのし上がった。
一方、建設機械のコマツは世界中の最新技術を格安で購入し、国内の生産を強化する。
地元の小さな会社でも積極的に海外展開を行っている例を知るが、なかなか手だてがない、資金がない、リスクが大きい、 どう対応したらいいかわからないなど、いまだに手を拱いている企業もたくさんある。
こうした企業の海外展開をどう支援するか。情報提供、人材育成、融資、官民一体のM&Aファンドの創設など、 大阪府としても主導的な支援が必要であると考える。日本経済のたくましさを信じて、縮こまっていないで、 しっかり手を打っていくことこそ大切である。商工労働部長の所見を伺う。
【商工労働部長答弁】
今や、経済活動に関しては、世界は一つという状況。
国内産業の空洞化が懸念されているが、もはやあらゆる機能を国内に残し、国内生産最優先というわけにはいかない。
企業には、拡大するアジアを初め世界じゅうから事業機会を取り込む発想で、積極的に検討いただきたい。
その際には、みずからの強み、競合他社にはまねのできない核となる部分、いわゆるコアコンピタンスは何なのかを見きわめつつ、 経営判断が求められる。企業それぞれの判断に基づく果敢なチャレンジが、今後の大阪産業をリードしていくためのもの。
行政として、最大限支援すべきと考えている。
お示しのM&Aも、海外での拠点を短時間で構築する上で有効な手段。官民の枠組みを作り、サポートしていくべきと考えている。
こうした企業支援の一方、海外展開を支え、あるいは各企業のコアコンピタンスを支える人材育成と人材の集積が重要。
こうした思いも込め、このたび産業人材育成戦略を策定した。今後、これに沿って世界で活躍できる、 大阪産業の持続的発展を支える人材をしっかり育成、集積していくことが求められる。
こうした努力をトータルで重ねながら、大阪の産業競争力の強化に取り組んでいきたい。

2 教育

(1)私学教育の支援にふさわしい私学助成制度について
(質問)
人材は我が国唯一の資源、教育への関心が高まっていることは歓迎する。
私学について、今年から導入された私学助成、いわゆる無償化について、財政面から続けられるのかという疑問を橋下前知事以来、提起してきている。
経常費助成についても、基本的に生徒の数に合わせた支給に変更する方針が示されている。
実質的に一人あたり58万円という一律の授業料支援金を設定し、経常費補助金もパーヘッドに変更するなら、 私学側としては生徒の数を増やすことだけを競うことになる。
一人でも多くの生徒を集めた学校だけが良い学校という評価になるのか。
教育の目的は優秀な、社会にとって有為な人材を育てることであり、たとえ数は少なくとも、値打ちのある人材を育てることに努力する学校も評価し、 支援すべきである。
本年度から始まった新たな私学助成制度だが、将来はより私学教育の支援にふさわしい私学助成制度とするよう、 今から検証と検討に着手するべきと考える。府民文化部長の見解を聞く。
【府民文化部長答弁】
私立高校の経常費補助金については、パーヘッドの考え方を原則に配分を行う予定。
学校の規模などによって、生徒一人あたりの教育経費が異なることを踏まえ、補助単価に一定の補正を行う。
また、現在、各私立学校は特色ある学校づくりを実践すべく懸命に努力されており、多くの府民から選択されているところ。
経常費補助金のほか、がんばった学校支援事業などにより、大阪の教育力向上に成果を上げた私学の取り組みを支援していきたい。
また、授業料支援制度は原則5年間継続することとしているが、私立高校に対する生徒、保護者の満足度、学校経営に与える影響を毎年検証し、 私学助成のあり方について検討を行いたい。
(まとめ)
私学が存在する意義は、多様な人材を育てるためにそれぞれの学校が個性に溢れた教育を行うことである。
授業料については、保護者アンケートを見ても決して無料化が望まれているのではない。公立とのあまりに大きい格差は是正されるべきだが、 教育内容にふさわしい応分の負担は受け入れるとの保護者の意向結果も示されている。
そもそも公私を問わず無償化ということには賛成ではないが、公私を自由に選択できることが可能になるような一定額の公的支援を行い、 後はそれぞれの私学の建学精神や経営方針に従って個性ある学校運営ができるような自由な授業料設定を認めることこそ、 私学支援の本旨であると考える。
(2)府立高等学校の通学区撤廃について
(質問)
教育二条例については、教育委員の方々のなかでも未だ様々な懸念が示されていると聞く。
とりわけ、府立高校の通学区の撤廃については問題があるとの指摘がなされている。
以前から議論を重ね課題を克服して、平成19年にそれまでの9学区を4学区に改めたばかりである。
自由に学校が選べることは大事だが、真に自由に選べることにつながるのか、却って混乱を来して子ども達に辛い思いを味あわせることにならないか。
志望が都心の学校に集中し、周辺の学校は淘汰され、地元の学校に通いたいとの子ども達の希望は叶えられないことになるのではないか。
また、問題は高校ではなく中学校の進路指導である。
十分な用意が整わなかった時、入試は大混乱になるのではないかと懸念する。
教育長の所見を聞く。
【教育長答弁】
通学区域を撤廃することにより、生徒にとって学校選択の幅が広がることは事実。
各学校が、魅力づくりを一層進めることが期待される。一方で、特定の学校に生徒が集中することへの懸念や、 進路指導に支障を来たす可能性があるなど、課題があることも認識している。
さきの府市統合本部において、知事から通学区域を平成25年度から撤廃すべきとの非常に強い意向が示された。
これに対し、教育委員からは早急な実施を懸念する意見があった。
私自身も、平成19年度から始まった現行制度の検証がまだ十分でないことなどを申し上げ、慎重な対応を主張したところ。
最終的には、知事の御判断で平成26年度に向けて通学区域見直しということになった。
非常に厳しいスケジュールだが、高校サイドと中学校サイドが連携を深め、中学生の進路指導と進路選択が混乱することのないよう万全を期してまいりたい。
(まとめ)
平成21年春の高校入試は極めて異常なものであった。
その前年、就任早々の橋下知事が財政再建プログラムに従って私学助成を大幅に削減すると宣言したところ、 公立志向が急に高まり受験生がそれぞれに当初の志望校から一つずつランクを下げて受験したため、 最も偏差値の低い学校に受験生が集中し、ある学校は定員の倍にもなって多くの不合格者を出す結果となった。
さらに定時制にも波及し、定時制高校だけでも167人もの不合格者を出した。
高校教育も受けられず、就職もままならず、丸裸で突然に社会に放り出された子ども達は厳しい人生を歩む宿命を負わされてしまった。
このような犠牲は決して許されない。入試制度は軽々に変更すべきものではないし、 いわゆるエリートの育成とともに底辺の底上げを忘れてはならない。学区制の撤廃については現実に多くの課題は存在する。
メリットだけではなくデメリットも十分に検討し、慎重に進めるべきである。
(3)府立学校の教員の評価方法について
(質問)
教員の評価を保護者や児童、生徒に委ねることも懸念される。
今でも一部の身勝手な保護者によって学校が混乱を来している例が報告されている。
このうえさらにこのようなことを制度化することは、これからの学校、教育に大混乱を来たすのではないか。教育長の見解を聞く。
【教育長答弁】
教員を評価するにあたって、私も、保護者の理不尽な要求や、生徒の一面的な見方をそのまま教員の評価につなげることになってはならないと考えている。
府立学校条例では、教員の評価に生徒による授業評価を織り込むこととしているが、これは校長が行う教員評価の一つの要素として組み込むもの。
今後、授業評価の結果を教員評価に具体的にどのように反映するのか、あるいは保護者の申し立て権を学校協議会を介していかに運用していくのか等、 詳細な制度設計を進めることになる。学校現場に混乱を招くことのないよう、十分留意しながら慎重に取り組んでまいりたい。
(再質問)
当初の、相対評価を見送る代わりに保護者や児童、生徒の評価を導入する、子どもに先生を評価させる、そんなことをすれば教育は成り立たない。
教育とはその専門の立場の方々によって、子ども達に必要であると厳格に選択された内容を、しっかりと教える毅然さが必要なのであって、 まちがっても保護者や児童、生徒の意向に左右されることなどあってはならない。
いわゆる問題教員を排除することは大事だが、そのために真面目な先生までダメにしてしまうようなことがあっては文字どおり、元も子もない。
私学助成、学区制撤廃、保護者の意見反映、顧客という言葉づかいなど、教育があまりにもマーケット・オリエンテッド、 市場主義的な考え方に偏りすぎてはいないか。
企業と学校は異なる。教育と経済を同じ原理で考えることは正しくない。
この間の教育基本条例をめぐる議論にあたって、教育長も大変ご苦労されたことと思う。子どもたちのために、教育のために、 教育長の思うところがおありならば、この際、お聞かせ願いたい。
【教育長答弁】
私が、この半年間、維新の会の条例案に反対し、議論してきたのは、教育という多くの方がかかわり、長い年月を要する営みに対し、 余りに急激に一つの方向性に決め打ちすることから生ずるリスクを心配したから。
大阪の教育に課題は多くあるが、十分な議論なしに一つの答えに決め打ちをし、機の熟さない形で具体的な教育施策に踏み込むことになれば、 最大の影響を受けるのは子どもたち。
それだけは避けなければならないと考えた。
12月以降、私どもが知事提案の条例案作成に携わるようになってから、維新の会からの問題提起を真摯に受け止めながら、 現行の教育法令と教育現場に即した条例案にすることを追及してきた。熟慮を重ねてきたつもりだが、 御指摘の通学区域の撤廃と教員評価の2点について、プラスの側面と同時に、リスクを伴うことはお示しのとおり。
今後は、御指摘いただいたことをしっかり胸に刻み、精いっぱい努力してまいるつもり。
特に生徒、保護者との関係は、その声に耳を傾け、教育に反映させなければならないが、同時にそれに振り回されないことが必要。
そのために一番大切なのは、教育の最前線で奮闘されている校長先生方としっかり連携していくこと。
教職員が前を向いて職務に精励できるよう、士気を高めながら、大阪の教育が揺らぐことなく発展できるよう全力をつくしてまいりたい。
(まとめ)
教育委員会が本来の役割をしっかりと果たすこと、知事と教委は十分な協議を行い合意を目指すこと、教育に政治判断はなじまない。

3 財政運営

「将来世代に負担を先送りしない」ことに関する知事の考え方について
(質問)
知事は、将来世代に負担を先送りしないとおっしゃる。このことは自民党の主張でもあり、基本的な考え方に異論はない。
改めて知事の考えるところを聞く。
【知事答弁】
社会経済の環境に応じ、府民が必要とする行政サービスを提供することが府の使命であり、 そのもととなる財政基盤を確かなものにすることが不可欠。
しかしながら、過去の財政運営を振り返ると、今後の教訓とすべき課題を見出すことができる。
そのため、財政運営においては、規律、計画性、透明性の向上を図り、負担を先送りしないことが何よりも大事であることを痛感し、 具体的な取り組みを積み重ねてきた。これを将来に向けてしっかり守る必要があると考えている。
その上で、徹底した選択と集中のもと、大阪の成長への布石に取り組み、将来世代に対する責任を果たしてまいりたい。
(再質問)
将来世代に負担を先送りしない、ツケを残さない、大事なことではあるが、単純ではない。
橋梁の保守など、今、行うべき対策を行わなかったことにより将来、莫大な補修費や建設費が発生したとなれば、 将来世代に大きな負担を残すことになる。
治安も手を抜けば取り返しのつかないマイナスを生じる。
防災も、教育も、経済対策も同じ、行うべき対策を行わなければ将来、大きな費用が必要となる。
帳簿上の借金だけを見るのではなく、本当に将来世代の負担を減らす大きな視点からその年その年の最適の財政運営をはかっていく、 その最適判断こそが、時の知事と議会に求められる責務である。
財政運営基本条例は必要ないと主張してきたが、条例に従い「収入の範囲で予算を組む」ことに徹した結果、 皮肉なことに却って「将来世代に負担を先送りする」「大きなツケを残す」ことになる場合もある。
臨時財政対策債の返済についても、立派なグラフに隠れて本当の中身は極めて見えにくくなっている。
将来の負債のなかには含まれていても、その返済のための原資は当てがない。
財政の健全運営のための「見える化」こそが重要であり、基金条例の中の減債基金を二つに分けて、 臨時財政対策債や減収補填債などの国の借金を返済するための基金を独立させ、 積み立てるべき数字が見えるようにすべきと自民党府議団は提案している。
どんぶり勘定をやめて、実態が見える区分けとし、間違いのない判断に資するというものである。
知事の所見を聞く。
【知事答弁】
財政の部分だけでなく、施策すべてにおいてできるかぎり府民にオープンな形で、見える化の中で進めるというのが私自身の基本的な方針。
先日、自民党会派からの代表質問で御指摘のあった臨時財政対策債に関わる償還状況を明らかにするための財政基金を別建てで管理し、 オープンで見えるようにすべく、部局で検討している。
(まとめ)
4年前に橋下徹氏を知事として擁立した原点は、今の大阪府財政逼迫の根本原因である税財政制度を中心とする、 国と地方の甘え甘やかす関係を根本から見直すことである。
この原点を見失うことなく、引き続き改革に取り組んでいただきたい。

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