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府議会の報告

平成25年2月定例会 一般質問

平成25年3月4日
吉田 利幸 議員

1.教育振興基本計画

(1) 計画に対する考え方について
【質問】
初めに、第1次安倍内閣の折に60年ぶりに改正された教育基本法により、国は平成20年に教育振興基本計画を策定されました。私は、これまでも議会の中で教育振興基本計画の策定を求めてきました。
パネルをご覧ください(資料1)
公立高等学校における中途退学者率は全国が1.1%に対し府が1.7%、不登校生徒数も全国が1,000人当たりで19名なのに対し、大阪は41名と、いずれも全国よりも悪い結果となっています。
生活保護率は、大阪は全国に比べ約2倍の数字、自殺者数は最近少しずつ減ってはいますが、それでも平成24年は全国で27,766名の方が、大阪府だけで1,720名が、自ら命を絶っているという事実は、深刻に受け止めなければなりません。
次のパネルをご覧ください(資料2)
府内市町村の保護費支払い額を見ると、大阪市だけで年間2,910億円にもなり、これは大阪市の年間予算の約18%を占めています。門真市では年間予算の実に21%にもなります。各市町村の生活保護に係る支出は年々増加する傾向にあり、財政を圧迫する大きな原因となっています。
知事の地元である八尾市と茨木市を比べてもらったら、人口はだいたい一緒ですが、約2倍八尾市の方が生活保護率が多い結果となっています。
まさに生活保護、自殺者、高校中退、不登校などの課題は、家庭教育の充実や、地域コミュニティとの連携なしに、学校や教育委員会だけでは解決が困難な課題です。
橋下前知事は、今までやってきたことをホッチキスでとめれば、それが教育振興基本計画になるという、暴言を吐いたことがあります。このことは、職務怠慢であったと言っても過言ではないと思います。このたび、遅ればせながらも、大阪府の教育振興基本計画が策定されることとなりましたが、この計画は、厳しい大阪の現状を踏まえて、課題を改善していけるような計画でなければなりません。
知事は、私が指摘したような大阪の現状を踏まえ、今回の計画の策定に当たって、知事が相当な覚悟で、それこそ責任をもって、この計画を策定されたものと思いますが、どのようなことに力点を置かれて計画を策定されたのか、まずお尋ねします。
【知事答弁】
若者をめぐる様々な社会的課題が見られる中、子どもたちには、これからの厳しい社会の中を力強く生き抜いていくための力を身に付けさせていくことが重要であり、そのためには何よりも、しっかりとした学力と豊かでたくましい人間性をはぐくんでいくことが大切だと考えている。
こうした観点から、教育振興基本計画では、「チャレンジ」「自立」と自らを律する「自律」をキーワードとして基本的な目標を設定するとともに、これらの目標を実現するため、教育の最前線である「現場」の活性化や公私の切磋琢磨にも意を用いたところであり、私の思いを充分に盛り込んだ計画とすることができたと思っている。
今後、この教育振興基本計画のもと、市町村や私立学校をはじめ、家庭や地域とも十分に連携しながら、大阪府トータルとして教育の充実に取組んでまいりたい
(2) 学校における教育力の向上について
【質問】
教育振興基本計画を推進するためには、学校教育が果たすべき役割は大きいと考えます。
その学校教育の充実を図るために重要なのは、何よりも教職員の資質向上と、管理職による学校経営の力の充実が必要であります。
まず、教職員の資質の観点についてですが、教員の採用について、本府の採用選考試験の受験倍率を見ると、小学校では、昨年度の受験倍率が3.8倍から今年度は3.0倍に低下しております。他の大都市を見ますと、千葉県が2.9倍と本府より低いですが、愛知県3.6倍、神奈川県3.6倍、東京都4.3倍と本府よりも高い倍率となっています。
なお、大阪府では、今年度、中学校の「理科」「技術」で合格者が必要数に達せず、追加募集を行わなければならない状況でありました。
さらに、厳しい雇用情勢にもかかわらず、合格者の採用辞退者が多く発生しています。採用辞退者のこの5年間の経過をみると、毎年10%程度、200人程度であったものが、昨年度の選考試験における合格者2,292人のうち、採用辞退者が合格者の13%以上にあたる308人に大幅に増えています。
このように、大阪で教員になりたい人が集まらない、あるいは合格しても採用辞退者が増えることが続くことは、教員の質を確保するうえで、非常に憂慮すべきことであります。
これは、平成20年8月から続いている給与カットや、平成24年3月に制定した教育行政基本条例等が影響していると考えざるを得ません。
大阪府の教育行政を預かる府教育委員会として、こうした状況をどのように考えているのでしょうか、また、大阪の教員の質をどのように確保していくのか。教育長の所見を伺います。
【教育長答弁】
教員採用につきましては、全国的に大量採用期にあるなど厳しい状況にあることは否めず、様々な受験者確保の方策を講じるとともに、選考方法の工夫・改善に努めているところです。
採用選考試験における倍率の低下や、採用辞退者の増加につきましては、本府及び他府県の採用数の動向をはじめ、様々な要因が影響していると考えておりますが、教員の質を確保するという面からは厳しく受け止めており、このような状況を、何とかしなければならないと、そういう思いを強く持っております。
今後、教育振興基本計画に示しました大阪の教育のめざす方向性や、重点的に取り組む方策をしっかり発信し、熱意ある優秀な人材の確保に努めてまいります。
(3) 地域・家庭における教育力の向上について
【質問】
私は、学校の取組みだけでなく、地域と、その基盤である家庭の教育力の向上が大切であると考えます。
地域に暮らす大人たちが思いを一つにして、地域の子どもたちを育てることによって、子どもたちは心豊かに成長し、良き社会人としての基本的な資質を身につけることができます。このような「つながり」を育て、学校・家庭・地域が連携した地域のコミュニティづくりの一層の推進が必要であると考えます。
また、私は、かねてよりすべての教育の基本として、家庭教育の重要性を指摘してきました。冒頭に述べたような様々な問題は、根本的には、家庭に子どもの居場所がないなど、その原因が家庭にあることが多いと考えます。子どもは親からの深い愛情に包まれてはじめて健やかに育つものであり、保護者やこれから親になる子どもたちが「親」のあり方を学ぶ「親学び」への、より多くの府民の参加を図る必要があります。
教育振興基本計画を踏まえて、豊かな地域のつながりのもとで「親学び」をどのように推進していくのか。教育長の考えをお聞きします。
【教育長答弁】
大阪府では、これまで、学校を核として地域社会が一体となって子どもを育てる「教育コミュニティづくり」を進めてまいりました。
また、家庭はすべての教育の出発点であり、子どもの成長の基盤となる家庭教育の役割は重要であると認識をしており、教育振興基本計画におきましては、地域の教育コミュニティづくりと家庭教育への支援を基本方針として位置づけているところでございます。
市町村や学校・地域等と連携をいたしまして、府内全市町村での大人を対象とした親学習や、すべての中学校及び府立学校での、生徒に対する親学習など、より多くの保護者や児童・生徒が参加できる多様な親学びの機会の提供に努めてまいります。
(4) 歴史、伝統、国及び郷土を愛する心を育む取り組みについて
【質問】
実は府の取り組みは5年ぐらい遅れている気がします。既に埼玉県や千葉県では非常な実績を上げていて、千葉県では約1,300箇所のコミュニティが情報を共有化して親学びに取り組まれ、埼玉県では発達障害の早期発見、早期対応という形で取り組みを進めている。府は発達障害については予算を取って、その緒に就いたところであり、今後しっかりやっていただきたいと思います。
教育における基本的なベースとして、まず国や地域を愛する心を育成することが重要です。そのためには、自分の国や郷土の歴史、先人に学び、地域の伝統について知る、それらを体験活動として教育していくことが重要となります。こういった教育はこれまではあまり重視されてこなかったと思います。 グローバル化が叫ばれていますが、英語力はあっても、日本人としての誇り、その中身がなければ、世界で通用しません。自分の国のこと、国歌が歌えないようではだめです。日本人として恥ずべきことです。日本人が海外の留学生に比べて負けているのはこの部分ではないでしょうか。 国や郷土を愛する心をはぐくみ、地域の伝統や文化に学ぶことについて、教育振興基本計画の中も触れられていると思いますが、これをどのように進めていくのか、教育長にお聞きします。
【教育長答弁】
グローバル化が進展する社会において、日本の若者が力強く生きていくためには、コミュニケーション能力だけではなく、わが国の歴史や伝統文化について、正しい認識と誇りを持てるようにしていかなければならないと考えております。
そのために、一つは、「地理・歴史」などの各教科・科目におきまして、近現代史を含む、わが国や大阪の歴史に関する教育を推進いたしますとともに、「志(こころざし)学」をはじめとして、「総合的な学習の時間」や特別活動などにおきましても、地域の歴史や伝統に学ぶ取り組みを充実してまいります。
また、博物館から学校への出前授業や教材としての文化財資料の貸し出しなど、社会教育施設をはじめとした地域の教育資源を積極的に活用いたしまして、芸術や文化に直接触れる機会の充実を図ってまいります。

2.教育委員会制度

【質問】
国を愛する心を育むということを府で基本方針として、文言を載せるだけでもかなり教育長は苦労されたと思うんですけれども、ある意味このようなことは当たり前であって、イギリスでは商社の方が御子息を地元の学校に入れたいというと、課題が国歌斉唱なんです。歌える人は通ってくれてもいいですよとなるんです。
これほど大事なことであるということであって、国を愛するうえで、日本の国の歴史を知っておくこと、郷土の歴史を知っておくことは非常に大事なことですし、世界へ出れば、国家観も歴史観も問われるわけで、しっかりこのことを教えていくことは非常に大事なことだと思います。
知事は、先日の我が党の代表質問に対して、「教育委員長については、非常勤ではあるが、委員長としての十分な役割を果たしていると認識している。」と答えられました。
我々としては、知事は、教育委員会制度について、批判的であると受け止めていたのだが、今回の答弁を聞く限り、知事は、教育委員会制度は、今のままでいいという認識なのでしょうか。
【知事答弁】
先日の私の答弁は、現行制度の下で、府教育委員会は十分に機能しているということを述べたもので、私としては、制度を考える上では、住民の声を教育にしっかりと反映させること、そして教育に係る権限と責任を明確にすることが重要であると認識している。
現在、国において、教育委員会制度のあり方についての検討が始まっており、まずは、その動向を注視していく。
要は教育委員会制度が形骸化して、形ばかりの教育委員会になるというのが一番問題になっているところであり、先ほど教育振興基本計画が遅すぎると指摘がありましたが、教育行政基本条例、府立学校条例の2条例が可決成立して、知事が教育委員会と協議して教育目標を定めることができるようになり、振興計画に知事として目標を入れ込むことができるようになった。教育の大きな方向性については吉田議員と僕とは大差がなく、価値観も合っていると思う。
したがって、大阪に独自の2条例を成立させて、今回教育振興基本条例を成立させることができた。その策定に当たっては、教育委員会は十分機能したと思っている。
【再質問】
今回報道された知事の教育長就任依頼について、我が会派の代表質問に対して知事は「公募はしない。この人がいいと思ったときには、公募という形をとらずに私から就任をお願いする。」と答弁されました。 
部長も内外から公募しているというのに、知事の考えが一貫していないと感じられます。
改めてお聞きしますが、そもそも公募は何のためにするものと知事はお考えですか。
【知事答弁】
公募は、私自身の中で、府政全般にわたって適材適所、素晴らしい仕事をしていただくために、広く人材を発掘するために行うもの。
教育委員については、まさに今大阪の教育改革の重大な責任を担える人材として適任であるというふうに考え、そういう人材があったときは、公募という形をとらずに私から就任をお願いたいと思っている。
【再質問】
再度確認しておきたいが、府市統合本部で、これから府立大学と私立大学の統合の話もあろうと思うが、その意味で、もっと緊密にするための一つの判断として、橋下大阪市長の友人であるというのは校長になられた時もいろいろ新聞に載りましたが、今回の教育長就任依頼が橋下市長の指示であるということはないですね。
【知事答弁】
本人はこれまで3年間校長をされてきて、先生の価値観とも合うと思いますが、国歌斉唱についても徹底的チェックするなど、ルールにのっとって学校運営をされてきました。そういう運営を見て、大阪の教育全般を担う、教育委員としてふさわしい人と判断しました。
【まとめ】
国家斉唱については、私は無理強いすべきではない、ただ自然体で、当たり前でできないとだめだと思う。そういう意味では、知事にもっと教育現場へ足を運んでいただきたい。
5箇条の御誓文に「万機公論に決すべし」という言葉がある。大阪維新の会は圧倒的な過半数を占め、その分、責任が非常に重い。私ども自民党は13名にはなったが、公明党、民主党、共産党の意見にしっかりと耳を傾けるべきである。過半数だから何もかもそれで押し切るやり方でいいか、良くお考えいただきたい。この機会に述べておく。
もう一つは、評価の問題。このまま突っ走って、職員、教職員のモチベーションが上がるのか、一考の余地がある。人の評価は至難の業であり、部長が本来の仕事をしっかりやらなければいけないところ、これに時間をかけすぎることのないようにしていただきたい。そういう意味では、自己評価を認めたり、チーム力を評価することも必要と考える。
綛山副知事、福祉部長をはじめ、今年度末に退職される職員の皆さんが、職責を全うされたことに敬意を表し、今後も大阪府の行く末にご助力いただけることを願って、私の質問を終わります。

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